年増×裸で公衆の前に晒す=「指示にしたがえば」
女はJR田端駅のホームに立った。
女の携帯が鳴った。娘の携帯からのコールだ。
おそるおそる出る。
「もしもし…?」
『あ、お母さん?』娘の声だった。ひどくうわずって泣いているようだった。
「あ、たえちゃん! 大丈夫!?」
『う、うん』
「大丈夫だからね。もう少し我慢してね」
『あ、あの、指示を言うから』
「指示?」
『10時15分発の磯子行きに乗って』
「うん」
娘は急に泣き出した。
『ごめんなさい。ごめんなさい。私怖い。なんか、裏ビデオに出すとか、売春させて働かせるとか、海外にどうとか、大声で怒鳴られたり、殴られたり…』
女は青ざめた。
「大丈夫よ。大丈夫。もう少しだけ我慢してね」
娘が悲鳴を上げた。 携帯に雑音が入り、男の声がした。
『娘が取り乱して、すまなかったな。心配したろ?』
「!、娘に乱暴はしないでください」
『あんた次第だよ。それに、俺に命令するのは、ルール違反だ。ペナルティとして、娘の指を一本折る』
「やめて!」
『では、お前に変わりに償ってもらおうか』
電車がホームに入って来た。
ドアが空くと、一人の目つきの悪い男と目があった。男は携帯を耳に当てていた。女は、こいつらの仲間だととっさに思った。
「言う通りにするから、やめて。電車に乗ったわ」
『よし』
「どうすればいいの?」
『今、何を着てる?』
「え? ワンピースとカーディガンを…」
女は目つきの悪い男をの方をちらっと盗み見た。男は、何気なくつり革広告を眺めているようだ。
『全部脱げ』
「え! できません」
『そうか。じゃあな。娘にはかわいそうな事をしたな。気がかわったら連絡しろ』
「ちょっとまって!」
電話は切れた。
女は車内を見回した。お客はあまり乗っていない。座席が半分ほど埋まっていた。立っている人も4〜5人いる。目つきの悪い男は、少し離れた位置でこちらのほうを見ているようだ。
能天気な電子音のメロディが流れた。
娘からのメールだった。
件名も、内容も無かった。添付の写真が一枚。それは、少女の痣だらけの裸の画像だった。あわれにむき出しになった女性器からは、赤いものまじった白い液体があふれてる。
女は頭がくらくらした。愛する夫は、娘の成長を見届ける事無く事故死した。夫との愛の結晶であり、彼女の存在の全てであり、女手一つで大切に育てて来た娘が大変な目にあっているのだ。助かるなら、私はどうなってもいい。彼女は思った。
ぼんやりした頭で、力なくワンピースの肩ひもに手をかけた。すとんとワンピースが足下に落ちた。乗客の4〜5人がその事に気がついたようだった。ブラジャーに手をかけて、外す。床に落とした。下着に手をかけて脱いだ。形の崩れ始めた体が、全裸になった。
電話が鳴った。
「もしもし?」
『気は変わったか?』
「はい…」
女の頭はかすみがかったようになっていた。
『マンコいじって喘げ』
「…はい。だから、娘を助けてください」
車内の人間の半分が彼女の存在に気がついていた。彼女は、左手で携帯を耳に当てながら、右手で股間をさすっている。どこを見ているか分からない目で、荒い息をついている。車内は静まり返っていた。暗闇を走る電車の音だけが、車内にひびく。
「あ…、あふぅ」
『みんな見てるか?』
「見てる人と見てない人がいますー」
『御願いしてみろ。私の、使い込んだ汚らしい淫乱マンコを見てください。だ。』
「みなさん、私の、使い込んだ汚らしいマンコを見てくださぃ」
『どうだ?』
「わかりません」
『注目してもらえ。娘を殺すぞ』
「みなさん、御願いします。私の全裸を見てください!娘のために御願いします!」
車内は静まり返ったまま反応がない。全く無視する者、それとなく違う車両に移動する者、遠慮なく不審な目を向けてくる者、それぞれが息を殺したように静まり返っている。
『次は何駅だ?』
「上野です…」
『ドアの前で、M字開脚して待て。ドアが開くと同時に、マンコ広げて挨拶だ』
「はぁい」
『注目されるぞ』
「はぁい」
『セリフもいえ。ご乗車ありがとうございます。よろしければ、磯子まで私にもお乗りくださいだ。うははは』
電車が止まった。女はふわふわした足取りでドアの前に移動すると、腰を下ろした。脚を開く。
ドアがあいた。
女は人差し指と中指で、女性器を押し開いて、言った。
「ご乗車ありがとうございます。よろしければ、私にもお乗りください」
ホームは騒然となった。先頭の男は、目を見開いて動けない。その後ろの女子高生の集団が悲鳴を上げた。人だかりができた。誰かが駅員に知らせたようだ。
[急病人のお客様がおられましたので、運転を少々見合わせております]とアナウンスが流れた。騒ぎは大きくなった。
女はその様子を、女性器をひらいたままぼうぜんと眺めていた。
女は駅員に腕を掴まれた。携帯が耳から離れた。
「あ、やめてください。娘が!」女が必死に叫んだ。
「いいから、降りてくださいよっ!!」駅員だって必死だ。
女は全裸のまま、駅員に車外に連れ出された。
黒山の人だかりができていた。
上野の警察署の1室で、女はうつろな目をしていた。
駅員から警察に引き渡されたのだった。女は、全てを対応にあたった婦人警官に話していた。
「で、その男に脅迫されたんですね?」
「はい」
「電車の中にも仲間がいたと」
「はい」
内線電話が鳴った。婦人警官は立ち上がって、電話にでると、2〜3言短く言葉を交わした。
「娘さんが迎えに来ましたよ」
「え?」
ドアがあいて、女にそっくりの少女が入って来た。
少女は怪訝な顔で言った。「何してんの? お母さん?」
「え? たえちゃん?」
「? そうだよ? どうしたの?」
「大丈夫なの?」
「うん。大丈夫。ていうか、むしろこっちのセリフ。どうしたの、お母さん?」
「でもだって、電話が…」
「私かけてないよ」
「…。いわゆる電話詐欺の一種のようですねぇ」婦人警官が言った。
「最近の、電話詐欺は悪質で、手口も…」
女は婦人警官の話は聞いてなかった。
ゆっくり立ち上がって、娘を抱きしめると、静かに泣き続けた。